著作権を主張するようにした話

Jan 7, 2026 min read

○ 聴いていただける場所が欲しかった

私はわざわざ時間を掛けてまで、楽曲を制作して提供するつもりはない。なぜなら時間の無駄になるからだ。 私はゲーム音楽について、たいして興味はない。

音楽アルバムには古くからライナーノーツが付き物であったから、ひとつ話として書いてみよう。私がゲーム音楽を制作して提供することになった経緯についてだ。

ゲーム制作プロジェクトの責任者である男は言った。

「このゲームをリリース後に、音楽アルバムを出しても良いよ。そのアルバムの売上の3割を君にあげると約束するよ」

楽曲提供にあたっての報酬について興味はないし、その段階で売上があるのかどうかも全く判然としなかったので、嬉しくも何とも思わなかった。しかし自分の制作した楽曲を聴いてもらえる場所があれば良いとは思っていた。 SoundCloudは存在するが、現在(2024年)に至るまで日本語版のサイトは公開されていない。しないのだろう。少しでも多くの人に聴いてもらえるかもしれないのであれば、拙い自分の作った楽曲でも、使ってもらえたら幸いだ、という思いでゲーム音楽の制作に携わり楽曲を提供した。

それから15曲ほど、要望に応えてリテイクを複数回繰り返して提供した。しかし肝心のそのゲームはどれだけ経ってもリリースされない。たまに、開発に進捗があったというアナウンスを彼が行い、ベータ版としてZipファイルで公開している。限られた旧時代のSNSにおいてだ。そのアナウンスを心待ちにしている人はいるのだろうか?

それはさておき、開発に携わった人であれば誰もが断言する。

「そのゲームは完成しないし絶対に売れない」

「ゲームとして全然面白くない」

ひとつでも面白い、もしくは新しいと開発陣側も、何よりユーザーが思ってくれたとしたら、そのゲームをリリースした暁にはジャイアントキリングもあり得るかもしれない。しかしどのような部分についても、何ひとつとして良いところを挙げられない。何もだ。本当に。良いところが一切ない。残念ながらゲーム…とすら呼べないようなものだ。

その責任者が一生懸命に開発しているのであればまだ良いが…連日、利用していたDiscordには全然関係のないゲームで遊ぼうと募る通知が届いていた。

その通知の案内に一度も参加したことはない。私個人はそういった目的がまったくなかった。それより彼はもともと絵を描くのがメインだったのでそれを進めたら良いと考えていた。彼自身コーディングするので、それを進めたら良い。もし販促が得意ならそうしたら良い。しかし実態は開発ではなくゲームで遊んでばかり。


私の所属していたその「ゲーム作っています組織」に登録されている多くの人々が、実は全く開発に参加していないということを知ったのは結構最近のことである。

実際に動いている開発陣や絵描きさんは?と尋ねた時だ。

…正味、3人だった。それは私を含めてである。

過去に何人もの開発者や絵を描いていた人がいて去っていったのを知っている。去っていった後に、その理由を尋ねても彼ははぐらかした。

そんな彼がゲームを完成させたとして、誰がどこでどうやって売るのか?

彼はSteamで売ると答えた。Steam?Hey, Steam! プロモーションしてくれる?

かろうじてSteamは以下のように答えるかもしれない。

「んんん…ユーザーの購入履歴に基づいた関連表示はできるかも…」

Steamに限らず、ユーザーが任意のキーワードを元に探せばたいてい目的に近いゲームを見つけることができる。もしくは誰かが紹介してくれたり、話題となるような要素があれば、そのゲームは誰かが見つける。そんな要素はない。ゲームエンジンを利用して開発をしているが、それすら古すぎるものだ。


○ フリーのゲームエンジン

そのゲームエンジンを最初に使用した作品(ゲームエンジン提供元)自体がまずフリーウェアで公開されている。派生ゲームはある程度知られているものでも6、7本だ。

WindowsXP以上のスペックで動作する。

「超軽量!モタつきなし!」なんてことは利点には到底なり得ない。超軽量モタつきなしなんて当たり前だ。

では仮に無料でそのゲームをリリースしたとする。誰も見向きしないだろう。何かしら、斬新で新しい点やストーリーやグラフィックなどがなければ、誰もダウンロードせず、結果として私の提供した楽曲は誰にも聴かれない。

Steamでの競合相手はゴロゴロといる。しかも多くは大企業だ。プラットフォームの利便性などは小規模組織にとってはむしろマイナスでしかない。少なくとも私が所属していた組織では最悪の選択だ。何ひとつそれでは勝てない。

どんな小規模組織も企業や個人も勝つ(利益にしろ知名度にせよ)ためにSteamを利用している。

小規模組織・企業での利点は様々な面での立ち回りやすさだと思うのだが、立ち回らない者だけの集まりが何の目標・目的もなく、こういった目標がありますよとも示されないのであれば、何人も何千人も彼のもとに集まったところで、立ち回らない。

成功したスタートアップ企業などから学ぶとすれば、新しい魅力的な要素を自社の製品に持っていたり、今までにないような視点をCEOや企業自体が持っていて、何らかの製品を世に送り出して世間の注目となり得た場合、それは成功するだろう。

「Steamであれば対象ユーザーが多くてプラットフォームも問われない」と言えども、それは製作・開発側にとって都合が良いだけでしかない。

面白くないゲームは売れない。足元にも及ばない。

近年のサーチエンジンオブジェクト対策は苛烈を極めており、通常、小規模組織のWebサイトが最上位に上がってくることは簡単には起こらない。新しい検索ワードをバズらせるくらいでないと太刀打ちできない。

彼は口コミでバズるなんて言う甘えた幻想でも抱いているのだろうか? 考えてもいないだろう。 完成しないゲームを一生だらだらと作り続けるつもりか。 世の中甘くないと言うけれども、世の中を斜に構えて甘く見ている私でさえ、彼の考えは甘いと思う。


○ ゲーム未公開の末路

私は当初からそのゲームは売れないだろうとわかっていた。確信していた。それでも参加したことは失敗だった。ストレスだらけの場所へ飛び込んでしまった。

しかし彼は言った。再掲となる。

「このゲームをリリース後に、音楽アルバムを出しても良いよ。そのアルバムの売上の3割を君にあげると約束するよ」

ということは、このゲームを売るつもりでいるのだなということがわかるし、売れなかった場合のことを考えていない。それに、3割だと? 万が一リリースされたとして9割貰わないといけないよ。

個人や小規模の組織でゲームを開発して公開するのは決して難しいことではない。敷居は20年前と比べたら遥かに低くなっている。それでもこのゲームは完成しないだろう。

私が陣頭指揮を執ったのであれば、少なくとも2024年の現時点で正式版をリリースできただろう。シナリオ含めて少なくとも彼の10倍速くリリースできる。

「このゲームをリリース後に、音楽アルバムを出しても良いよ。そのアルバムの売上の3割を君にあげると約束するよ」

上記のような言葉を発したことの前提条件としてはまずゲームがリリースされることであり、公開されないのであれば偽りとなり、責任は彼にある。 小規模の組織であれば何も問題とならないことだが。

**「著作権侵害」「知的財産権の搾取」**をされている気持ちになることがわかるだろうか?

著作権侵害について私はあまり気にしないほうなのだけれども残念でならない。

やはり、私が懸念しているのは、そのゲーム自体がリリースされないことだ。

あり得ないことだけれども、もしゲームがリリースされることがあっても報酬は必要ない。 ゲームが売れないとしたら、誰が私の制作した楽曲を聴くのか? わかるだろうか? ゲームに音楽は必要不可欠だが、そのゲームが売れるかどうかについての保障はされない。

公開されなければ、本当に誰もがそれらの楽曲を聴く機会はない。